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インスタント留数定理

この記事は次のような方にオススメです。

  • 留数定理 ってなんかカッコイイ!!!!」 と思っている。
  • ラーメンタイマーが必要。

3分で留数定理が使えるようになります。

例として、留数定理を使って次の計算をします。

 \displaystyle
\oint_{C_1} \dfrac{1}{z^3-4z}\mathrm{d}z \qquad C_1:|z-(1+i)|=\dfrac{3}{2}

積分、周回積分

 \displaystyle
\int_C
の部分は、経路 Cに沿った線積分をするという意味です。 Cのことを積分路とか言います。特に、積分路が単純閉曲線*1のときは \displaystyle \oint_Cと書いて、周回積分と言ったりします。1周回る積分です。線積分の意味は、よく分かりません。今回の問題の積分 C_1は中心 1+iで、半径 \frac{3}{2}の円です。

留数定理

留数定理とは、次の式が成り立つことです。

 \displaystyle
\oint_{C} f(z)\mathrm{d}z = 2\pi i(\mathrm{Res}(a_1)+\mathrm{Res}(a_2)+\cdots +\mathrm{Res}(a_n))

 a_k C上またはその内部における f(z)の有限個の孤立特異点*2です。 留数定理によると、積分計算をしないで線積分の値が求まるようです!しかし、Resとはなんでしょう。

Resはresidue(留数)の略です。

留数

留数の定義?はローラン展開*3の話が必要になるので省略します。だいたいテイラー展開の拡張版のようなものです。 留数は、 f(z)特異点 a_kによって値が決まります。具体的には、次の計算によって求めることができます。

 z=a f(z) n位の極のとき、  \displaystyle
\mathrm{Res}(a) = \dfrac{1}{(n-1)!}\lim_{z\to a}{\dfrac{\mathrm{d}^{n-1}}{\mathrm{d}z^{n-1}}(z-a)^n f(z)}

特に、 n=1のときは、

 \displaystyle
\mathrm{Res}(a) = \lim_{z\to a}(z-a)f(z)

となります。

 n位の極

極の定義?はローラン展開の話が必要になります。やはり省略します。うまく説明できないので、例を挙げます。たとえば、

 \displaystyle
f(z) = \dfrac{1}{(z-\alpha)^n}

のようになっているとき、 z=\alpha f(z) n位の極であるといいます。また、

 \displaystyle
g(z) = \dfrac{1}{(z-\alpha)^n(z-1)} \qquad (\alpha \neq 1)

のようになっていても、やはり z=\alpha g(z) n位の極です。また、 z=1 g(z)の1位の極です。

解く

問題を再掲します。

 \displaystyle
\oint_{C_1} \dfrac{1}{z^3-4z}\mathrm{d}z \qquad C_1:|z-(1+i)|=\dfrac{3}{2}

 \displaystyle
f_1(z) = \dfrac{1}{z^3-4z}

としておきます。 まず、留数定理を用いるために留数を求めます。留数は各特異点に対して決まるものでした。 f_1(z)特異点、つまり、 f_1(z)の分母をゼロにするような zを求めます。これは、


z^3-4z=0

を解けばいいので、 z=0, \pm 2の3つが特異点だと分かります。あとで使うので、 f_1(z)因数分解しておきます。


f_1(z) = \dfrac{1}{z(z-2)(z+2)}

さて、特異点は3つと分かりましたが、留数定理に必要な特異点 C_1上またはその内部のものだけでした。曲線 C_1を描くと

f:id:poyopoyoyon:20160626015737p:plain

こうなるので、内部の特異点 z=0 z=2の2つになります(ともに1位の極)。この2つについてそれぞれ留数を求めると

 \displaystyle
\mathrm{Res}(0)

 \displaystyle
= \lim_{z\to 0}(z-0)f_1(z)

 \displaystyle
= \lim_{z\to 0}(z-0)\dfrac{1}{z(z-2)(z+2)}

 \displaystyle
= \lim_{z\to 0}\dfrac{1}{(z-2)(z+2)} = -\dfrac{1}{4}

 \displaystyle
\mathrm{Res}(2)

 \displaystyle
= \lim_{z\to 2}(z-2)f_1(z)

 \displaystyle
= \lim_{z\to 2}(z-2)\dfrac{1}{z(z-2)(z+2)}

 \displaystyle
= \lim_{z\to 2}\dfrac{1}{z(z+2)} = \dfrac{1}{8}

となるので、留数定理より*4

\displaystyle
\oint_{C_1} \dfrac{1}{z^3-4z}\mathrm{d}z

 \displaystyle
= 2\pi i(\mathrm{Res}(0)+\mathrm{Res}(2))

 \displaystyle
= 2\pi i\left(-\dfrac{1}{4}+\dfrac{1}{8}\right) = 2\pi i \times \left(-\dfrac{1}{8}\right) = -\dfrac{\pi}{4}i

と求めることができます。





*1:円や長方形のような、端っこがない曲線です。ただし、∞みたいに交点を持つものは除きます。

*2:おおよそ、 f(z)の分母をゼロにするような点(複素数)のことです。

*3:ローラン級数 - Wikipedia

*4:カッコイイ!!!!