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オイラの微分方程式

次の形の微分方程式オイラー微分方程式と呼ばれています。*1

 x^2y'' + axy' + by = R(x) \tag{1}

 yの階数と xの次数が一致しています。 これを解きたいのですが、定数係数ではないのでつらそうです。

オイラーさん、置換する

そこでオイラーさん考えました。

(1)の微分方程式は、 x=e^tと変数変換することで定数係数の2階線形になるというのです。

実況置換中継

実際に見ていきましょう。  \dfrac{d}{dt}e^t = e^tより、


\dfrac{dy}{dt} = \dfrac{dy}{dx}\dfrac{dx}{dt} = y'\dfrac{d}{dt}x = y'\dfrac{d}{dt}e^t = y'e^t = y'x = xy'\tag{2}

となります。また、積の微分法則 \ (fg)' = f'g+fg'より、*2


\dfrac{d^2y}{dt^2} = \dfrac{d}{dt}\dfrac{dy}{dt} = \dfrac{d}{dt}(xy') = \left(\dfrac{d}{dt}x\right)y'+x\dfrac{d}{dt}y' = xy'+x\dfrac{d}{dt}y'\tag{3}

となり、(3)式の第2項は

 x\dfrac{d}{dt}y' = x\dfrac{d}{dt}\dfrac{dy}{dx} = x\dfrac{d}{\color{red}{dx}}\dfrac{dy}{dx}\dfrac{\color{red}{dx}}{dt} = x\dfrac{d^2y}{dx^2}x = x^2\dfrac{d^2y}{dx^2} = x^2y''

となります。さらに、第1項は(2)の結果より、 xy' = \dfrac{dy}{dt}です。よって(3)式は

 \dfrac{d^2y}{dt^2} = \dfrac{dy}{dt} + x^2y'' \tag{4}

となります。(4)式より x^2y'' = \dfrac{d^2y}{dt^2}-\dfrac{dy}{dt}として、(2)と共に(1)に代入すると、*3

 \dfrac{d^2y}{dt^2} +(a-1)\dfrac{dy}{dt} +by = R(e^t)\tag{5}

となって、見事定数係数になりました!あとは、特性方程式を解いて一般解を求めて未定係数法で特殊解を求めるなどすればよいです。

例題

 x^2y''+xy'-4y=4\log{x}\ を解きます。

これは、(1)式において、 a=1,\ b=-4,\ R(x)=4\log{x}としたもので、(5)式に代入すると

 \dfrac{d^2y}{dt^2} -4y = 4\log{e^t} = 4t \tag{6}

となります。

  • 補助方程式の一般解

(6)式の(左辺)=0としたもの(補助方程式)の一般解を求めます。

\dfrac{d^2y}{dt^2} -4y = 0特性方程式 \lambda^2-4=0を解くと \lambda = \pm 2を得るので、一般解 Y

 Y = C_1 e^{2t} + C_2 e^{-2t}\tag{7}

となります。

  • 特殊解

(6)式の特殊解は右辺の形より y_0 = At+Bと予想できます。 y_0'= A,\ y_0''=0より、(6)に代入して -4At -4B = 4tとなるので、 A=-1,\ B=0

 y_0 = -t\tag{8}

です。

(7)(8)より、(6)の解 y

 y=Y+y_0=  C_1 e^{2t} + C_2 e^{-2t} -t

となります。最後の仕上げは x=e^tより、 t=\log{x}として tを消去します。

 y=C_1 e^{2\log{x}} + C_2 e^{-2\log{x}} -\log{x} = C_1 x^2+\dfrac{C_2}{x^2} -\log{x}




*1:より一般には、 x^ny^{(n)} + a_1x^{n-1}y^{(n-1)} + \cdotsの形のものです。

*2: \dfrac{d}{dt}e^t = e^tも使っています。

*3: R(x) R(e^t)と書き換えるのを忘れないようにします。